さあやってきました第三弾!!
今回も元気に日本列島を縦断していきますよー!
まだ他の地方を見てない方は「九州編」「四国編」の記事もよかったら読んでみてください!

今回は中国地方編をお届けします。
実はこのエリア、瀬戸内の麦味噌と日本海側の米味噌が交わる”味噌文化の分岐点”ともいえる所なんです。
その特徴が気候や地形の違いに応じて、味噌の味わいや使い方に現れてとても面白いんです。
地元に根ざした味噌蔵や郷土料理を巡りながら、中国地方の味噌を一緒に楽しみましょう!
中国地方の味噌の特徴とは?
中国地方はまさに味噌文化の分岐点!
県ごとに異なる味噌と出会えるのが大きな魅力です。
ざっくり表にまとめると以下のとおりで
県名 | 味噌の種類 | 原料 | 色 | 味の特徴 |
広島県 | 府中味噌(白味噌) | 米麹、大豆 | 白〜淡色 | 麹たっぷり、甘い |
岡山県 | 甘口米味噌 | 米麹、大豆 | 淡色 | まろやか、甘い |
山口県 | 瀬戸内麦味噌 | 麦麹、大豆 | 濃いめ | 香ばしい、甘い |
島根県 | こじょうゆ味噌 | 米、麦、大豆 | 赤褐色 | 甘辛 |
鳥取県 | 合わせ味噌 | 米麹、麦麹、大豆 | 淡色 | マイルド |
山口・広島の瀬戸内側は「麦味噌」 (広島は地域によって「米味噌」)
島根・鳥取・岡山は「米味噌」といった感じで分けることができます。
ここから中国地方の各県にフォーカスして、地元ならではの味噌の特徴や
歴史ある味噌蔵、そして味噌を活かした郷土料理をご紹介していきます!
味噌を通じて中国地方の新たな発見があるかもしれませんよ?
山口県 麦の恵みを感じる甘口味噌のふるさと
山口県は麦味噌文化が根付く地域。
かつて米が育ちにくく麦の栽培が盛んだった背景から、今も麦麹をたっぷり使った甘口味噌が主流です。
口に入れた瞬間にふわっと香ばしい麦の香りが広がり、塩気は控えめ。
特徴としては
- 甘口でまろやか
- 麦の粒がしっかり残る
- 香りが豊か
味噌汁にすればどこか懐かしい、ホッとする味わいです。
中でも人気なのが「とくぢ味噌」。
麦と大豆の粒がそのまま入っていて、麹歩合が高くコクと甘みがあり多くのリピーターに支持されています。
味噌蔵では「瀬戸内麦味噌」のように広島・愛媛と共通した部分もあり、蔵ごとの味わいや香りの違いも魅力として楽しめます。
山口県の味噌を支える味噌蔵
礒金(いそかね)醸造株式会社(山口市阿知須)
1911年(明治44年)創業。
伝統的な製法と手作業を大切にし、地域の風土と素材を活かすことにこだわり続けています。
例えば
- 麹菌へのこだわり
- 原料(山口産)へのこだわり
- 杉樽や木桶を使った長期熟成
- 当たらな分野への挑戦(クラフトビール)
などがあります。
商品ラインナップの「特選生麦味噌」と「特選生合わせ味噌」の2種類を食べ比べてみるのもいいですね。
一馬(いちうま)本店(防府市)
1899年(明治32年)創業。
もともとは造り酒屋を営んでいましたが、味噌・醤油の製造に転換した歴史があり今日まで地元に愛されています。
「100人に1回だけ食べていただくより、お一人に100回食べていただきたい。」
この理念の基、家庭の食卓にあり続けるよう伝統的な製法、また原料にこだわり「いつもの味」を守っています。
オススメは「無添加麦味噌やまさん」です。
- すり味噌で粒が小さいので食べやすい
- 塩分控えめで甘さがありまろやか
- 大麦・はだか麦・大豆を山口県産を使用しているから「やまさん」
郷土料理 けんちょう(麦味噌仕立て)
山口県の郷土料理として食される「けんちょう」は、豆腐と大根、人参や油揚げなどを煮たシンプルな料理です。
麦味噌を使い野菜の甘味と味噌のコクを楽しめます。
その他の調味料として、みりん、砂糖、醤油などが使われごま油で炒めて仕上げることが多いです。
鳥取県 自然の力でじっくり育てる”生きている味噌”
鳥取県の味噌は素材の力と自然な発酵を大切にする、優しくて奥深い味わいが魅力です。
地元で育てられた米や大豆、瀬戸内海の塩など厳選された国産素材を使い
昔ながらの無添加・天然醸造で丁寧に作られています。
特に多いのが、米麹をたっぷり使った甘めの米味噌。
例えば「3倍麹仕込み」と呼ばれるタイプは、米の自然な甘みとやわらかい口あたりが特徴です。
一方、長期間熟成させた味噌には香ばしさと奥深いコクがあり、好みに応じて選べるのも嬉しいポイントです。
主な特徴は
- 地元産の米・大豆・塩を使用
- 無添加・天然醸造
- 麹歩合が高い米味噌
- 味の変化が楽しめる生きている味噌
中には地元の野生麹菌を使う蔵もあり、その土地ならではの香りと風味を追求する動きも広がっています。
また鳥取県の伝統的な「さいみそ」いわゆる”おかずみそ”もオススメです。
野菜を細かく刻んで味噌に漬け込んでおり、白いご飯に乗せて食べると箸が止まりません。
鳥取県の味噌を支える味噌蔵
藤原みそこうじ店(八頭郡若桜町)
2017年開業と新しい味噌蔵。
店主の経歴が魅力的で、大学で民俗学を学び卒業後に農業法人の味噌部門に配属されたことがきっかけで、味噌の奥深さに魅了されたそうです。
京都の老舗味噌店で8年間修行を積み、味噌づくり・販売のいろはを学ぶ。
自然と原料にこだわり抜き、今日まで天然の味噌を生み出しています。
注目すべきは、全国でも稀に見る野生の麹菌を自家採取していることです。
蒸した米を外に置き、自然に空気中の麹菌が付着するのを待つという非常に難易度の高い手法を凝らしています。
限定した年しか安定的に採取できない貴重な麹菌を使用した味噌は、まさに絶品です。
オススメは、「はじまりの味噌 玄米みそ自然」。
塩谷糀味噌株式会社(西伯郡大山町御来屋)
1918年(大正7年)創業で100年を超える老舗味噌蔵。
「こうじや」を生業として100年余り、現在は4代目に引き継がれ今もなお地元だけに留まらず、県内外の方にも愛されています。
原材料や伝統的な手法・自然発酵、無添加にこだわり続けて生み出された味噌は、地元の人に親しまれ「この味噌でなければ」という声も多いそうです。
オススメは「名和みそ」です。
郷土料理 親ガニの味噌汁

鳥取県の郷土料理として代表的なのは「親ガニの味噌汁(かに汁)」です。
これはズワイガニのメス(親ガニ)と大根を主な具材にしたシンプルな味噌汁で、
冬の時期に県内で広く親しまれている料理です。
親ガニの身や卵の内外・外子のコクも楽しめ、カニの旨味がしっかり感じられる郷土の味です。
島根県 自然と生きる
島根県の味噌は、土地の風土と発酵の力が生きる、素朴で奥深い味が魅力です。
地元産の米や大豆を活かし、無添加・天然醸造で仕込まれた米味噌が中心。
一口で心まで染みるような優しい味わいです。
特徴的なのは、自然発酵と長期熟成。
冷涼な山間部では、風通しの良い”壁のない蔵”で数ヶ月から数年かけてじっくり熟成されます。
蔵に住み着いた酵母や乳酸菌が働き、複雑な旨味と香り、深いコクが生まれます。
島根の味噌の特徴
- 地元の米・大豆を使用
- 甘さ控えめで素材の味を引き立てる
- 年ごとに香り・味が異なる自然発酵の生味噌
- 無添加・天然熟成
また、隠岐・海士町などには島根独自の「こじょうゆ味噌」という伝統食もあります。
米・大豆・小麦などを使い、家庭ごとに異なるレシピで受け継がれた味は”発酵文化の家宝”とも言えます。
どこか控えめだけど、しっかり芯はある島根の味噌は地域の人柄を映しているようで面白みがあると思います。
ぜひ一度味わってみてください。
島根県の味噌文化を支えた味噌蔵
小西本店(松江市)
1853年(嘉永6年)創業。
創業当初は糀屋としてスタートし、その後発酵技術を活かして味噌屋になりました。
約170年にわたり山陰地方を代表する家庭の味「錦味噌」を製造しており、島根県民には馴染深い味噌蔵です。
オススメは「神倉(かんのくら)」。
幻の国産大豆”三朝神倉大豆”と国産米”きぬむすめ”、室戸海洋深層水を凝縮した”塩”を贅沢に使っており
ほどよい甘みと甘みのバランスがとれた上品な味わいをご堪能ください。
寿老味噌本舗(邑智郡邑南町)
約120年前(明治時代)から創業。
伝統的な「もろみ味噌」の醸造元で、現在3代目が味噌づくりを継承しています。
炒った大豆と小麦の粒を残したつぶつぶ食感が特徴で、通常の味噌とは異なり
醤油で味付けされた甘辛い調味料的な味噌に仕上がっています。
味噌汁に使う味噌とは違いますが、ご飯が止まらないこと間違いなしです。
郷土料理 しじみ汁
しじみ汁の発祥のとも言われる、島根県宍道湖(しんじこ)は国内トップレベルのしじみの漁獲量を誇ります。
基本的には味噌汁として食べられるのが一般的ですが、昔は土用丑の日に肝臓の疲労回復を願ってすまし汁として食べられていたそうです。
独特の風味がありますが、栄養面での効果はテキメンですね。
広島県 甘くまろやかな「府中味噌」が育むやさしい食文化
広島県の味噌といえば、真っ先に名前があがるのが「府中味噌(ふちゅうみそ)」です。
平安時代に中国から伝わったとされる味噌文化が、江戸時代の広島藩の推奨によって府中地域に根づきました。
今では広島県内の味噌生産の半分以上を占めています。
府中味噌の特徴
- 米麹たっぷり、塩分控えめの甘口白味噌
- 半年〜1年かけた天然熟成による深いコク
- 脱皮大豆使用で、なめらかで高栄養価
まろやかで上品な甘みが広がる味噌で、「日本の減塩味噌の先駆け」とも言われています。
味噌汁はもちろん、材料の隠し味にも活躍する府中味噌を一度味わってみてください。
広島県の味噌文化を支えた味噌蔵
金光味噌(府中市)
1872年(明治5年)創業。
老舗味噌蔵で「府中味噌」という約400年の歴史を持つ伝統的な味噌づくりを継承しています。
無添加・有機無農薬野菜にこだわり、味噌だけに留まらずドレッシングやスイーツなど多様な商品も開発。
オススメは「秀峰白みそ」です。
厳選した原料と伝統製法で作られた白味噌は、まろやかな口あたりでThe・府中味噌といった感じです。
神龍(しんりゅう)味噌(神石高原町)
1948年(昭和23年)創業。
全国でもわずか、1%ほどしか残っていいない伝統的な製法、「蓋糀法」「木桶仕込み」「天然醸造」を手作業で守り続けています。
国産の大豆や広島県産の古米を使い、無添加にこだわり自然の風味と素材本来の味を大切にしています。
昔ながらの手間ひまかけた伝統製法で作られる希少な味噌は、他ではなかなか味わえない逸品となっています。
オススメは「昔造り 御味噌(麦味噌)」です。
定番の府中味噌とは違い、麦の香りがたち甘みがある昔ながらの味噌です。
郷土料理 かきの土手鍋
「かきの土手鍋」は広島を代表する冬の鍋料理です。
土手の内側に味噌を塗りその中に牡蠣、豆腐、白菜、春菊などの具材を入れて煮込みます。
土手鍋の由来は3つあり、
- 鍋の内側に味噌を土手のように塗るから
- 鍋料理を考えたのが土手さんだから
- 川の土手で牡蠣を食べていたから
と言われています。
岡山県 ジーンズだけじゃない?丁寧な手作業が光る”まろやか味噌”
岡山県は丁寧な造りのMADE IN JAPANジーンズが有名ですが、味噌も負けていません。
丁寧に造られた岡山県の味噌は、米麹たっぷり使った自然な甘みとまろやかさが特徴です。
地元産の良質な米や大豆を使用し、無添加・手作りにこだわる蔵が多く昔ながらの製法が今も息づいています。
岡山味噌の特徴
- 地元産の米・大豆使用、米麹味噌が主流
- 麹の割合が多く、自然の甘みとやさしいコク
- 合わせ味噌もオススメ
- 「はとむぎ味噌」や「美作みそ」など特産を活かした商品も展開
伝統の技に加え、新しい技術も取り入れる味噌蔵も増え品質と風味を高め、
飽きのこない味噌として県内外からの支持も集めています。
岡山県の味噌文化を支える味噌蔵
まるみ麹本店(総社市)
1950年(昭和25年)創業。
70年以上の歴史があり、現在も創業当時の精神「自然に学ぶ心」を受け継いぎながら、無添加・天然製法にこだわった味噌づくりを続けています。
工場や蔵には備長炭を敷き詰め、発酵環境を微生物が活性化しやすい状態に整備。
味噌造り・麹造りには電子イオン水を使い、素材が持つ生命力を最大限に引き出す独自の技法で仕込んでいます。
オススメは「奇跡の味噌」です。
原料、自然醸造、マイナスイオンの環境にこだわり抜いたからこそ引き出される、口あたりや深い味わいは体に優しく上品な味と言えます。
名刀味噌本舗(瀬戸内市)
1954年(昭和29年)創業。
創業当初は麹屋「こうじ高原」として農家が持ち込んだ米を麹にしていました。
やがて、味噌やひしお等の商品を展開し現在の「名刀味噌本舗」に改名。
3代目は兄弟が中心となり伝統的な味噌づくりを継承しています。
昔ながらの製法と完全無添加、地元原料へのこだわりで本物の発酵食品を生み出し、発酵食好きや健康志向の方にも人気の味噌蔵です。
オススメは「玄米麹味噌」です。
玄米の優れた栄養価と長期熟成ならではの甘味と風味が特徴です。
郷土料理 柚子味噌
岡山県井原市など柚子の産地では、柚子の皮や果汁を味噌に加えてじっくり煮詰める「柚子味噌」が作られます。
焼きおにぎりや田楽、和え物などに使われています。
鼻に抜ける柑橘系の香りと味噌の旨味が引き出された焼きおにぎりは最高ですね。
まとめ
中国地方編はまさに”味噌文化の交差点”。
瀬戸内の温暖な気候が育む香ばしい麦味噌と、日本海側の冷涼な気候でじっくり熟成される米味噌、それぞれの個性が光ります。
山口県 | 香ばしい麦味噌文化、粒感と甘みが魅力 |
鳥取県 | 自然発酵の生きた味噌、やさしい米味噌とおかず味噌 |
島根県 | 自然熟成が生む奥深さ、伝統のこじょうゆ味噌 |
広島県 | 甘口の府中味噌、減塩味噌の先駆け |
岡山県 | まろやかな米味噌、特産を活かした個性は味噌 |
どの県も地元の素材や気候を活かした味噌づくりを守り続けており、蔵ごとのこだわりや味わいは本当に多彩です。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
今回の記事をとおして、中国地方の新たな魅力に共感していただけたら幸いです。
次回は、「近畿地方編」です!
新たな味噌の文化を発見しに、お供してください!
またお会いしましょう!!